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浦和地方裁判所 昭和61年(ヨ)866号 決定 1987年3月31日

債権者

嘉山將夫

東義二

右両名代理人弁護士

宮里邦雄

山口広

債務者

日産ディーゼル工業株式会社

右代表者代表取締役

川合勇

右代理人弁護士

成冨安信

中山慈夫

小島俊明

主文

一  債権者らがいずれも債務者に対し雇用契約上の権利を有する地位を仮に定める。

二  債務者は、昭和六一年一二月から本案判決確定に至るまで、毎月二五日限り、債権者嘉山將夫に対し月額一八万九四八〇円、債権者東義二に対し月額二〇万二一四〇円の割合による各金員を仮に支払え。

三  申請費用は債務者の負担とする。

理由

第一当事者の求めた裁判

一  債権者ら

主文同旨

二  債務者

1  債権者らの申請をいずれも却下する。

2  申請費用は債権者らの負担とする。

第二当事者の主張

一申請の理由

1  (被保全権利)

(一) 債務者は、ディーゼルエンジン及びこれを搭載したトラック・バス並びにこれらの補修部品の製造及び販売、日産自動車株式会社から委託を受けた小型トラックの受託生産等を事業内容とする株式会社である。

(二)(1) 債権者嘉山將夫(以下「嘉山」という)は、昭和四八年一〇月三〇日、債務者の準社員として入社し、同四九年四月一日、債務者に正社員として雇用され、入社以来債務者川口工場に勤務し、昭和五三年まで同工場内第二機械課において、大型トラック部品の一つであるキャリアの機械加工を担当し、同年からは同課60推進区において、同じく大型トラック部品であるフライホイールハウジングの機械加工を相当してきた。

(2) 債権者東義二(以下「東」という)は、昭和四七年四月、債務者に社員として雇用され、入社以来債務者川口工場に勤務し、昭和五六年四月からは同工場内第二機械課09推進区において、大型トラック部品であるバンジョーの洗浄組み付け作業を担当してきた。

(三) ところが債務者は、債権者らに対し、昭和六一年一二月三日、同月五日付けで解雇する旨通告し、もつて債権者らが債務者に対し雇用契約上の権利を有する地位にあることを争つている。

(四)(1) 債権者嘉山の賃金は一か月一八万九四八〇円であり、同東の賃金は一か月二〇万二一四〇円である。

(2) 債務者は、毎月二五日に、毎月一日から月末までの賃金を支払う旨定めた賃金規程を有する。

2  (保全の必要性)

債権者らは、いずれも妻と子供二人の扶養すべき家族を有し、その賃金収入により生活を維持してきたものであつて、このままでは本件解雇により、大変困難な生活を強いられることになる。

3  以上のとおりであるから、債権者らは債務者に対し雇用契約上の権利を有する地位を仮に定め、昭和六一年一二月以降本案判決確定まで債権者嘉山に対し一八万九四八〇円、同東に対し二〇万二一四〇円を毎月二五日限り支払うことを命ずる仮処分を求める。

二申請の理由に対する債務者の認否と主張

A  認否<省略>

B  主張

しかしながら、次に述べるように、債権者らと債務者との雇傭関係は昭和六一年一二月五日限り消滅している。

1 債務者は、債権者ら両名に対し、昭和六一年一二月三日、債務者川口工場において口頭で、同月五日付けで解雇する旨通告した。

2 債務者は、債権者らに対し、本件解雇に際して、債権者らの三〇日分の平均賃金相当額の予告手当として、債権者嘉山につき一八万九四八〇円、同東につき二〇万二一四〇円を提供したが、受領を拒否されたのでこれを供託した。

三債務者の右主張(二B)に対する債権者らの認否と主張

A  認否<省略>

B  主張

しかしながら債務者における就業規則(以下「本件就業規則」という)には、別紙のとおり解雇をなしうる場合を制限した第六八条の規定がある。

四債権者らの右主張(三B)に対する債務者の認否と主張

A  認否

認める。

B  主張

しかしながら、債権者らの解雇は、川口工場の移転に伴い、余剰人員となつたことを理由とするものであつて、債務者の就業規則第六八条第一項第二号の「やむをえない業務上の都合」に該当する整理解雇である。

すなわち、

1 債務者の事業所、事業種目、従業員数の概要は、後記川口工場閉鎖までは以下のとおりであつた。

(ア) 上尾本社及び工場(トラックの組立等)従業員数四七五六名

(イ) 川口工場(部品の加工・組立等)従業員数九〇五名

(ウ) 群馬工場(太田市所在・トラックの組立等)従業員数四八七名

(エ) 東京事務所その他厚生施設等従業員数三五三名

2 川口工場の移転計画

(ア) トラック業界においても、国内・国外の景気悪化と産業不振の影響を受けて、競争が激化し、債務者の業績も低下してきており、債務者としても合理化につとめてきたのである。

(イ) ところが、川口工場は、周辺の都市化により首都圏整備法などの規制をうけ、用地拡張が困難であり、土地・建物等の租税負担も著しく上昇して生産コストにはねかえるようになつており、また、トラック業界に生じた低成長経済に対応する構造的変化に対応するため川口工場の生産工程を上尾、群馬両工場に移転して集約統合する必要が生じた。

かくて、本件川口工場の群馬工場および上尾工場への移転が計画されたのである。

工場を移転集約し工順を集約するならば、そこで直ちに人員の組替が行われ、必然的に余剰人員が生ずるが、債務者としては、川口工場の移転に伴つて発生する余剰人員については、剰員整理解雇をすることなく、定年等自然退職者の発生(その不補充)、新規採用の抑制、関連会社への出向等によつて一、二年中に余剰状態を解消することを予定していた。

従つて、右工場移転計画は、川口工場に働く全従業員を上尾、群馬の両工場のいずれかに転勤させるのであつて、転勤に同意する限り、従業員の解雇を予定しないものであつた。

3 移転計画の説明と従業員への意思確認

(一) 債務者は、債務者の従業員で組織する全日産自動車労働組合(以下「日産労組」という)との間で、川口工場の移転につき、十分かつ慎重な労使協議を経た後、昭和五九年一二月二五日、右移転の計画の具体的内容を発表した。その内容は、昭和六一年一月から一二月までに四回に分けて川口工場の生産工程全部を上尾工場と群馬工場に移転するというものであつた。右計画発表後、債務者は、川口工場の全従業員に右移転計画の説明を繰り返し行い、更に、昭和六〇年六月ころには、債権者らを含む川口工場の全従業員から上尾又は群馬工場への移動を承諾するか否かの意思を確認するとともに希望を聴取した。また、日産労組川口支部も、組合の立場から組合員全員(当時は債権者らも同組合員であつた。)に右移転計画の説明をした。

(二) 債務者からの右の意思確認に対して、債権者らはいずれも上尾工場への配転を明確に拒否した。その経緯は、次のとおりである。債権者嘉山に対しては、昭和六〇年六月二一日、同人の上司である門馬勤組長及び豊田五郎係長が面接し、右豊田が川口工場の移転計画の考え方及び会社の状況を説明したうえ、上尾工場への転勤の同意を求めたところ、債権者嘉山は、「この移転は会社都合だから自分は上尾には行きたくない。川口で仕事をしたい。」「上尾に転勤できるできないの問題ではない。とにかく川口工場の閉鎖には反対であるし、自分も上尾には移転しない。」と述べて配転拒否の意思を明確に表示した。債権者東に対しては、同月二五日、同人の上司である豊田及び佐貝敏組長が面接し、債権者嘉山に対してしたのと同様の説明をしたうえ、上尾工場への転勤の同意を求めたところ、債権者東は、「川口工場の閉鎖そのものに反対である。通勤が可能か否かについては話したくない。」「自分は上尾に行くのはいやだ。」と述べて配転拒否の意思を明確に表示した。

債権者らは、右の経過の中で、債権者らの名で又は、総評全国一般労働組合東京地方本部北部地域支部日産ディーゼル分会(以下「分会」という)の名を以つて移転計画に反対を表明し、上尾・群馬両工場への川口工場の従業員の配属に反対して、他の川口工場の従業員等にも反対を呼びかける等の積極的な移転反対の活動を展開した。そのため、債務者としては、債権者らの態度が変わらない限り、話し合う余地がないものと認めて、債権者らに対して昭和六一年六月の意思確認の後に、改めて意思確認をしなかつた。

4 移転計画の実施

(ア) 右のような状況の下で、川口工場の移転が昭和六一年一月一三日から実施され、債権者嘉山の所属する第二機械課60推進区の業務は同年三月に、債権者東の所属する同課09推進区の業務は同年九月に上尾工場に移転し、債権者ら以外の右各推進区の担当従業員はいずれも配転に同意して上尾工場に転勤した。

(イ) ところが、債権者らは、右の各移転時期を過ぎても移転及び上尾・群馬両工場への配属に反対する態度を変えなかつた。その後、債権者らは、昭和六一年一一月二〇日になつて初めて移動に応ずる旨の意思を表明し、上尾工場の原職担当職場での就労を要求してきたが、右時期までには、川口工場の従業員のうち退職予定者と債権者らを除き配転先が確定し、大部分については、既に転勤を終えて、当時製造工程の担当者で川口工場に残つていたのは、債権者らを除き一五名となり、これらの者も同年一二月五日の最終移転を待つばかりとなつていた。

5 債権者らの解雇

川口工場の移転に伴う転勤は、同工場の従業員の解雇を予定していないものであるが、あくまでも転勤に同意のあることを前提としており、同意しない者に転勤の業務命令を出しても、これを拒否されれば懲戒解雇をすることにならざるを得ず、それでは解雇を予定しないことにならないのであるから、不同意者まで強行配転するものではない。債権者らも、川口工場の移転開始後早い時期に、川口工場の他の従業員と同様に配転を承諾すれば、上尾工場への転勤もあり得たが、移転計画の発表以来債権者らは終始一貫して公然と反対運動をしてきた。債務者としては、その反対まで押して配転を命じても円滑な配転が期待できない状態にあつたので、債権者らに対し、上尾工場への配転命令を出さなかつた。このような状況の下では、債権者らは、川口工場限りの勤務ということになるが、前記のとおり債権者らの所属していた当該推進区の業務が移転することにより川口工場においては担当業務がなくなるので、右移転時に剰員となつた。

しかし、当時、川口工場には移転の対象となる機械類の清掃、整備の作業が存しており、当時の川口工場の全従業員がこれに従事する状況下にあつたので、債権者らにもその作業に従事させ、雇用を継続しうる最長時期まで雇用を継続していたが、それらの作業も前記の昭和六一年一一月二〇日ころには完了し、もはや、川口工場には債権者らに従事させるべき業務がなくなり、上尾工場においても配属しうる欠員のある部署はなく、出向・派遣先もない状態になつたので、剰員であることが明らかになり、昭和六一年一二月三日に通常解雇したのである。

6 以上のとおり、川口工場の移転計画は、当初人員整理を予定していなかつたのであるが、債権者らは右移転計画につき終始反対し、上尾工場への配転についてもこれに応じない旨表明してきたのであるから、川口工場の移転を円滑に行い債務者の合理化を推進するためには、債権者らを除いて川口工場の移転を実施することとして、やむを得ず債権者らを解雇したのである。

よつて、債権者らの解雇は、昭和六〇年、六一年に実施された川口工場の移転に伴い、余剰人員となつたことによるもので、本件就業規則第六八条第一項第二号の「やむをえない業務上の都合」に該当する解雇である。

五債務者の右主張(四B)に対する債権者らの認否と主張

A  認否<省略>

B  主張

1 かりに、債務者主張のように就業規則第六八条第一項第二号にあたる場合であるとみられるとしても本件解雇は、他工場に転勤することを拒否すれば解雇になることを明示したうえで債権者ら両名に意向打診をすることなく、債権者らは配転の辞令が出ればこれに応ぜざるをえない旨表明していることを無視して、突如なされたものであつて、計画的に仕組まれた「だまし打ち的」な解雇であつて解雇権の濫用として無効である。

2 本件解雇は以下に述べるような債権者らの組合活動を嫌悪した債務者が、川口工場の閉鎖等を口実に、債権者らを排除するためになされたものであり、労働組合法第七条一号に該当し、無効である。

(一) 昭和六〇年三月の川口工場閉鎖計画の発表を聞いた債権者らは直ちに右計画の撤回もしくは変更を要求し、仮に配転する者がいるとしても就労条件に不当な不利益をもたらさないようにすべきであると考えて、当時所属していた日産労組川口支部内で活発な組合活動を展開した。

(二) なぜなら、右工場閉鎖計画は川口工場のほとんどの従業員に対し単身赴任かもしくは長時間通勤を強いるものであり、家庭の事情等で配転に応じることができない従業員は「自己都合退職」と見なされて、低額の退職金と引換えに退職を余儀なくされるという内容であつたからである。

(三) そこで、債権者らは、右労組川口支部の常任委員選挙に立候補するなどして川口工場閉鎖に対する反対を従業員に呼びかける活動を展開した。しかし、右組合は工場閉鎖反対の声に全く耳を傾けようとしないばかりか、むしろ工場閉鎖推進の方向を明らかにして、労働条件の深刻な変更及び退職を余儀なくされる従業員の疑問に答えようとしなかつた。

(四) 右組合のかかる姿勢に対して強い批判を抱いていた債権者らと訴外恩田和義の三名は右組合を脱退する決意を固め、総評全国一般労働組合東京地方本部に加盟すべく、昭和六〇年一〇月二日前記組合を脱退すると共に、同日右労組東京地本に加盟し、あわせて総評全国一般労働組合東京地方本部北部地域支部日産ディーゼル分会を結成した。なお同月二日、右労組東京地本第一回中央執行委員会において、右加盟ならびに分会結成が承認された。

(五) 右分会は結成以降、川口工場閉鎖に伴なう川口工場従業員の不利益を訴え、右閉鎖への反対等を川口工場従業員に呼びかけて活動を展開してきた。

(六) 昭和六〇年一〇月四日、右労組東京地本と右分会は連名で債務者に対し労働組合結成を通告し、あわせて川口工場閉鎖計画の中止、閉鎖に伴う強制配転の抑制、遠距離通勤に伴う条件改善等の要求ならびに分会の組合活動の保障・便宜供与問題についての団体交渉を申し入れた。

(七) 右労組東京地本と分会はその後も再三にわたり団体交渉を申し入れたが、債務者は団交を拒否した(そこで、右労組地本は昭和六〇年一一月一六日東京都労働委員会に救済申立をしたところ、昭和六一年七月一日付けで救済命令が発された。)。

六債権者らの右主張(五B)に対する債務者の認否<省略>

第三当裁判所の判断

一被保全権利

1  債務者と債権者らの雇用関係

申請の理由一1(一)は当事者間に争いがなく、同一1(二)についても債権者嘉山が債務者の正社員となつた時期の点を除き当事者間に争いがない。そして、<証拠>によれば債権者嘉山が債務者の正社員となつたのは昭和四九年四月一日であることが認められる。

2  右雇用関係は消滅したか

(一) 解雇の意思表示

当事者の主張二B12の事実は当事者間に争いがない。

(二) 就業規則の解雇規定

当事者の主張三Bは当事者間に争いがない。

(三) 本件解雇は、「やむをえない業務上の都合によるとき。」(就業規則第六八条第一項第二号)にあたるか

(1) 債務者の事業所・事業種目・従業員数の概要(川口工場閉鎖前)

当事者の主張四B1は当事者間に争いがない。

(2) 川口工場の移転計画

<証拠>によれば、当事者の主張四B2の事実が一応認められる。

そうすると、債務者としては、川口工場に勤務する従業員が上尾工場ないし群馬工場に転勤することに応じさえすれば、何とか川口工場勤務の従業員に対する解雇をしないでもすますことができたとみることができる。

(3) 債権者らが転勤に応じなかつたといえるか

(ア) <証拠>によれば、当事者の主張四B3(一)の事実は一応認められる。

(イ) また、<証拠>によれば、債務者は、債権者嘉山に対しては昭和六〇年六月二一日当時の直属の上司豊田係長、門馬組長が、債権者東に対しては同年六月二五日豊田係長、佐貝組長が上尾工場への転勤についての意思確認を行つたところ、両名とも、「上尾には行きたくない。川口で仕事をしたい。」「とにかく、川口工場の閉鎖には反対であるから行かない。」旨述べたことが一応認められるけれども、債権者らが昭和六一年一一月二〇日には上尾工場への配転に応ずる意向を表明したことは債権者の自認するところである。そうすると、本件解雇の意思表示の時点において債権者らが上尾工場への転勤に応じないとはいえないから、本件解雇が就業規則第六八条第一項第二号にいう「やむをえない業務上の都合によるとき」にあたるとはいえない。債務者は、川口工場には昭和六一年一一月二〇日ころには債権者らに従事させる業務がなくなり、剰員となつたと主張するけれども、「やむをえない業務上の都合」があるかどうかは工場単位で考えるべきでなく会社単位で考えるべきであると解されるから、債権者らが転勤についての意思を翻した後の昭和六一年一一月二〇日ころには川口工場に債権者らの従事すべき業務がなくなつていたとしても、川口工場移転計画は前記のように群馬工場ないし上尾工場へ川口工場勤務の従業員を転勤させることにより解雇者を出さないでもすむという計画であつた以上、本件解雇前すでに上尾工場への転勤に応ずる旨の意思を表示していた債権者らに対する解雇が「やむをえない業務上の都合による」ものとは認め難い。

なお、<証拠>によれば、債権者らは昭和六〇年一〇月二日それまで加入していた日産労組を脱退し総評全国一般労働組合東京地方本部北部地域支部日産ディーゼル分会を結成し、川口工場閉鎖への反対を従業員に呼びかけるなどの運動をしたことが一応認められるが、右は分会としての活動であつて、これをもつて債権者ら個人の意思確認に代えることができないだけでなく、<証拠>によれば分会としても昭和六一年一一月二〇日債権者らの上尾工場への配置を申入れていることが一応認められるのである。

(四) 本件解雇の効力

そうすると、本件解雇は、その余の点について判断するまでもなくその効力を生じたとはいえないことになる。

従つて、債務者と債権者らとの間の各雇用関係は消滅したとはいえない。

3  賃金請求権の存否

申請の理由1(四)は当事者間に争いがない。

そうすると、債権者らは債務者に対する債権者ら主張の賃金請求権をすでに取得しないし将来取得するものとみることができる。

二保全の必要性

1  債権者嘉山について

債権者嘉山には、妻と子供二人がいることは当事者間に争いのないところ、<証拠>によればその生活を債権者嘉山の債務者から得ていた賃金と年間約八〇万円の妻のパート収入とにより賄つていたため、債権者嘉山は、本件解雇により、その収入の道を断たれることになり、著しい損害を蒙るおそれがあることが一応認められる。

2  債権者東について

債権者東には、妻と子供二人がいることは当事者間に争いのないところ、<証拠>によればその生活を債権者東の債務者から得ていた賃金によつてのみ賄つていたため、債権者東は、本件解雇により、その収入の道を断たれることになり、著しい損害を蒙るおそれがあることが一応認められる。

3  従つて、本件仮処分はその必要性があるものというべきである。

三むすび

よつて、債権者らの本件申請を認容し、事案に照らし保証を立てさせないで主文一、二掲記の仮処分を命ずることとし、申請費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官小笠原昭夫 裁判官野崎惟子 裁判官永井裕之)

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